輸液の目的、使い分け、リンゲル液の種類、輸液1号、2号、3号、4号液の違い

輸液とは?

そもそも輸液とは?

「輸液とは、液体を皮下・血管内・腹腔内などに投与すること」と定義されていますが、一般的に経静脈的すなわち血管より輸液剤を点滴することを意味します。
輸液は血液ではないので、入れると血は薄まります。すると血を薄めすぎて全身状態が悪くなってしまうこともあるのです。
そのため輸液をする目的をしっかり理解しましょう。

輸液の目的4つ

輸液の目的として、

  • 水や電解質の補給
  • 栄養の補給
  • 血管の確保
  • 病態の治療

と大きく4つに分けられます。
私たちの体は、食事や水を飲むことで水分や電解質を摂取し、ほぼ同量を体外に排泄することで体内のバランスを保っています。この水分量や電解質の濃度を一定に保つことを『恒常性(ホメオスターシス)』といい、健康維持には不可欠です。しかし何らかの原因によりこの恒常性が崩された場合、輸液により体液の異常を是正することが治療の基本といえます。

維持輸液とは?

維持輸液とは、ヒトが生命を維持するために必要なものを補給することを目的とした輸液のことです。生命維持のために必要とされる1日の水分量と電解質を基本として、それにエネルギー・糖・タンパク(アミノ酸)・脂肪などの栄養素や微量栄養素を加味して投与されます。

補充輸液とは?

補充輸液とは、細胞外液の喪失を補充する目的で開発された輸液のことです。細胞外液の喪失は、出血・嘔吐・下痢や発汗などによる体液喪失に伴う脱水などによって起き、高度になると循環動態の維持が困難となって血圧低下やショックを引き起こすこともあります。そのため、補充輸液は維持輸液と違い、エネルギーや各種栄養素の投与よりも、水・電解質の急速補充に重きが置かれています。

輸液剤の使い分け

輸液剤の使い分けの基本は「どこに水を入れるか」を理解すると覚えやすいです。

術前・術中・術後の周手術期輸液

術前・術中・術後の周手術期輸液は、手術による予想外の事態にも備えれるよう万全の準備が必要といわれています。例えば入院して手術を行う場合は、前日夜から絶飲食となる場合が多いため、手術時は脱水状態となっている場合が多いです。そのため手術前日から術前の水分欠乏量と術中の維持輸液を考え、補液していく必要があります。外来手術時の輸液管理も同様と考えます。また術中使用する麻酔薬の影響や術中の不感蒸泄、サードスペース、術中の出血など、手術侵襲による細胞外液の喪失や電解質バランスの異常が生じるため、これらの補正のための補液管理は必要不可欠となります。

ショック

なお一般的にショックを起こした場合は生理食塩水を用いたり、術中電解質を大量に投与し術後電解質の投与を少なくしたい時のために4号液を使用する場合があります。
低Na血症とは、何らかの原因により水の調節機能が正常に働かず血中のナトリウムの濃度が低下してしまうことで、臨床的には血中ナトリウム濃度が 136(mEq/l)未満になることを言います。この場合の治療としてNa欠乏量を評価し、高張食塩水の輸液によるNaの補正が必要です。高Na血症とは、低Na血症とは逆に血中のナトリウムの濃度が上昇してしまうことであり、臨床的には血液中のナトリウム濃度が145mEq/lを超えることを言います。治療としては軽度で無症状の場合は引水の実で改善する場合もありますが、重症であれば5%ブドウ液と利尿薬を使用しゆっくりと血液中のNa濃度を下げる必要があります。

低K血症

低K血症とは、体内の総カリウム貯蔵量の不足またはカリウムの細胞内への異常な移動によって血清カリウム濃度が3.5mEq/Lを下回ることです。治療としてはカリウム喪失に対するカリウム製剤の投与が必要とされています。逆に高K血症の場合は、血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを上回る状態のため、治療としてはインスリンおよびブドウ糖の投与、カルシウム溶液の投与が必要とされています。

急性膵炎

急性膵炎とは、過剰な飲酒や胆石などが主な原因となって膵臓に急性の炎症を起こしたものです。重症急性膵炎になると心臓、肺、腎臓、脳神経など重要な臓器の障害を合併して、多臓器不全へと進行する可能性もあります。治療としては絶食・絶対安静とし、循環血漿量の維持のため輸液投与を行っていく必要があります。通常成人では1日1500~2000mlの水分が必要ですが、急性膵炎ではその2~4倍量の輸液が必要となります。また重症例だけではなく軽症例も十分な細胞外補充液を用いて初期輸液を行うべきとされています。

リンゲル液とは

輸液の種類 組成(mEq/L) 市販製品
Na K Cl 乳酸
生理食塩水 154 0 154 0 生理食塩液注
リンゲル液 147 4 109 0 リンゲル液注リンゲル糖注
乳酸(酢酸)加 リンゲル液 130 4 109 28 ラクテック® ハルトマン ヴィーン® D,F など

①リンゲル液とは

生理食塩水(水にNaやClがはいった液)にカリウムやカルシウムをの電解質を加えヒトの細胞外液に近づけてあります。リンゲル液は電解質濃度が細胞外液である血漿とほぼ等しいのです。

バイタルサインの安定化には最も効果的な輸液製剤であるため術前などによく使われます。
しかし、リンゲル液でもClイオンが過剰となることがあり、酢酸や乳酸などを加えてClイオン量を抑えるようなってきてます。
そのため最近ではClが少ない「酢酸リンゲル液」や「乳酸リンゲル」が使用することが多くなっています。

②乳酸リンゲル液とは

乳酸リンゲル液にはその名の通り乳酸が入っており、体内代謝を利用してHCO3が生成され、リンゲル液よりもさらにヒトの細胞外液に近づけてあります。

③酢酸リンゲル液とは

乳酸は肝臓で代謝されるため、肝不全やショック時には乳酸リンゲル液の投与はリスク高く避けるべきだという意見があり、その中で誕生したのが酢酸リンゲル液です。酢酸は肝臓だけでなく全身の臓器で代謝することができるため、乳酸リンゲル液よりリスクが低く投与しやすいと言われています。

④重炭酸リンゲル液とは

昔はリンゲル液にHCH3を入れることは不可能だったため、代わりに乳酸を入れた乳酸リンゲル液が作られていたのですが、日本でHCO3をリンゲル液に加えたもの、重炭酸リンゲル液が開発されました。これは乳酸・酢酸リンゲル液に比べてヒトの細胞外液に最も近い優れたリンゲル液だと言われており、速やかにアシドーシスを改善させる製剤としても期待されています。

輸液1号、2号、3号、4号液の違い


輸液1号~4号の違いは基本的に生理食塩液と糖液(5%ブドウ糖液)の割合の違いです。
1号に近いほどナトリウムの割合が大きく、4号に近いほど糖液の割合が多く水分の割合が大きいです。

電解質輸液には、リンゲル液のように電解質濃度が血漿とほぼ等しい「等張電解質輸液」と血漿よりも低い「低張電解質輸液」の2種類あります。低張電解質輸液は体液より電解質濃度が低くブドウ糖を配合して浸透圧を等張にしていますが、ブドウ糖は代謝されると水になるので、結果的には体液より浸透圧の低い液を投与したことになります。このため、低張電解質輸液は細胞内液を含むからだ全体に水分を補給することができます。低張電解質輸液には1号液~4号液のような維持液類があります。

1号液(開始液)とは

0.9%の生理食塩水を水で半分に薄めたものです。カリウムを含まないので腎機能障害や状態がよくわからない病態不明時の水・電解質の補給に向いていると言われています。そのため、3号液が一番よく使われますが、この1号液も2番目によく使われます。

2号液(脱水補給液)は

NaやClの量は1号液と変わりはありませんが、KやP等の細胞内に多い電解質を含むと言われています。低張性脱水に用いられ、腎機能障害や高K血症時には用いないとされています。

3号液(維持液)は

3号は維持液とも言われており、2号とほぼ同じです。
この1号液~4号液中でもっともよく使われています。
NaやClの濃度は1号や2号の半分程度でKを含んでいます。1日に必要な水・電解質の補給として最もよく使われています。

4号液(術後回復液)は

3号液からNaやClをさらに減らしKを抜いたものです。電解質濃度が低く、細胞内への水補給効果が大きいとされていて、術後や高K血症、腎機能障害にも用いられます。

脱水と輸液

脱水とは?

脱水とは健康維持に必要な体内の水分量が不足した状態をいいます。

脱水は2種類の区別されます

脱水は様々な要因で起こります。

  • 細胞外液(血漿と間質液)を失う細胞外脱水:『Na欠乏性脱水(等張性脱水、低張性脱水)』
  • 細胞外液中の水分と細胞内液中の水を失う細胞内脱水:『水分欠乏性脱水(高張性脱水)』

の2種類があります。ちなみに、臨床的には水分とナトリウムの両方が欠乏した混合性脱水がよくみられると言われています。

『水分欠乏性脱水』は

病気等で食事摂取困難な状況が続いたり、炎天下で長時間作業により汗を多くかいた時、細胞外液のみならず細胞内液を含む体全体から水分が失われた状態をいいます。症状として、口渇感や尿量の減少、不安・興奮等があります。

輸液例

このような場合、細胞内まで水分を補充することのできる3号液等の維持液類や5%ブドウ糖液等が投与されます。

『Na欠乏性脱水』は

けがや手術による出血や嘔吐・下痢等により、細胞外液のNa等の電解質が失われ細胞外の浸透圧が低下し、血液含む細胞外液の水分が失われた状態をいいます。症状として、循環血液量の減少による血圧低下のため頭痛や眩暈、吐き気、立ちくらみなどの循環器症状がみられます。

輸液例

この場合細胞外液を補充するため、生理食塩液や乳酸(酢酸・重炭酸)リンゲル液等の細胞外液補充液が投与されます。

輸液の投与速度

輸液の投与速度は、患者の年齢・症状・体重や、循環機能・腎機能、輸液の内容物によって異なります。通常電解質輸液は300~500mL/hrの速度で投与します。(小児の場合50~100 mL/hr)また維持輸液は500mlを2時間~5時間かけて投与するのが一般的です。緊急時など、循環血液量を確保し循環動態を安定するために急速に体液補正が必要となる場合がありますが、急速輸液をする際のルート選択においては、K製剤、昇圧薬、降圧薬など直接的に循環動態に影響する薬剤(ハイリスク薬)が投与されるルートを必ず避けることが必要です。末梢点滴であれば、刺入部の漏れなどの異常にも十分注意しますまた、電解質 ( Na、K、Mg、Caなど )、糖質などはそれぞれ最大投与速度が決められています。特に糖質は大量・急速投与することにより高血糖等の副作用が出現するリスクがあるので、注意が必要です。